政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備事業
平成30年度だけで12億円の予算となっている「政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備事業」、公募期間は平成30年2月3日~平成30年3月7日の1ヶ月ちょっとで、結局、さくらインターネットが委託先に決定(プレスリリース: 「平成30年度政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備事業」の委託契約を締結)。
その結果として作成されているサービスが Tellus。2018年8月現在はベータ版の事前申し込みを受付中。ぼくも登録しました。
データの無償公開は大賛成。いままで「だいち」「だいち2」の画像をみたくても、手続きが面倒だったり、誰が得をしているのかよくわからない、Web 1.0時代みたいな有償システムだったりして、がっくりしていたのが、一箇所に集められて、低解像度でもともかく無料で解析できるのはとてもよい方策。
それにしても、またガラパゴス。AWSにすれば、英語のドキュメントが最低限だったとしても世界のデータアナリティクスの人たちが使ってくれたかもしれないのに。本当に残念。
公開データの詳細はまだでていませんが、募集要項には以下のような記載があるので、「だいち」のAVNIR-2(高性能可視赤外放射計2型)、PALSAR(パンクロマチック立体視センサ; 合成開口レーダ)、「だいち2」のPALSAR-2 (PALSAR後継機)、ASNARO-1衛星(USEF/METI/NECの可視光・近赤外線の撮像)のオルソ補正データは少なくともでてくるのかな。
関連リンク
- 平成30年度政府衛星データのオープン化及びデータ利用環境整備事業に係る委託先の採択結果について
- 1ヶ月の募集期間で、申請は2件だったそうです。
- 政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備に関する検討会 報告書概要
- 「2030年に約3,400億円の経済効果が期待 ((株)三菱総合研究所が試算)」 さて。
- 平成30年度経済産業省関連予算等の概要 - 政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備事業費
- 「平成30年度予算額 12.0億円(新規)」
- 「平成30年から平成32年までの3年間の事業であり、最終的にはデータプラットフォームへの登録件数500件を目指します。」 AWSにのせて、SpaceNewsでリリースすれば1週間で達成できるような目標と、1ヶ月の募集期間と12億円の予算。うーん。
Small Satellite Conference 2018
ユタ州ローガンで開催。会議開始と同時に集録が読めるようになっていたり、ライブストリーミングがあったりして、会議全体として、すごくインテグリティが高い。
AIAA/USU Conference on Small Satellites | Conferences and Events | Utah State University
サイエンスミッションで気になったもの
Cubesat系
- CubeX: A Compact X-ray Telescope Enables Both X-ray Fluorescence Imaging Spectroscopy and Pulsar Timing Based Navigation 集録PDF
- SmallSat Solar Axion X-ray Imager (SSAXI) 集録PDF
- Cesium Iodide Thallium-doped Incident Energy Spectrometer (CITIES): A Hard X-Ray Detector for CubeSats 集録PDF
もう少し大きいもの
コンステレーション
- ADCS at Scale: Calibrating and Monitoring the Dove Constellation 集録PDF
- Planetのコンステレーションで、ADCSのコミッショニングをどうやってやっているかの詳細な報告記事。レッスン(しかも100機以上のCubesatである手法を試してみるとか、気軽に実験するのが難しいような事例のレッスン)を共有するのはひじょうに大事だし、ありがたいですね。
感想
日本の超小型衛星業界は、システマティックに物事を実施する力がないまま50kg級に手を出して大失敗して、多くの人がCubesatになかなかもどれないまま、もう6-7年くらい停滞していまっている感じがする。なんで50kg級が失敗したのかの整理がどこかでなされるといいですね。
たとえば「超⼩型衛星による広視野・紫外線サーベイ計画」(谷津さん)には以下のような整理があります。
超⼩型プロジェクトの光と影 - 世界の衛星の半数は超⼩型衛星 - ⽇本は50kg移⾏で産業化に失敗 - (つばめを含め50kg級は死屍累々) - (コンポは⾼⽌まりで費⽤対効果悪)
50kg級のコンポーネントとか、ほとんど大型衛星のそれと比べてサイズ・質量・機能・価格がほとんど変わらないうえに、Cubesatみたいに無ハーネス設計とかができないので、ほんとうに大変そう。打ち上げても失敗ばかりなので、ぜんぜん経験が積み上がっていかないし。1機打ち上げるだけで〜1億円かかるんじゃコンステレーション構築も大学やベンチャーには非現実的(たとえばH-IIAの相乗りだと7800万円(「H-IIA 相乗りによる超小型衛星の打上げ機会提供 (有償制度)」)。これは質量でスケールすると安いのだけど、機会が数年に一度なのと軌道を選べないという相乗りの制約をそのまま受けてしまうので、コンステレーション構築にはほとんど使えず、試験機などの一発もの向け)。